AI×ビッグデータ解析
小澤・Kim研究室
小澤・Kim研究室では、機械学習や深層学習に代表されるAI技術を様々なビッグデータ解析に応用し、大量かつ高次元のデータから有意な情報を効率よくオンラインで抽出し、そこから識別、予測、診断、異常検知、可視化する技術を開発しています。また、これを国立研究機関や企業から提供された実課題に応用して、真に社会実装可能なシステム開発を行っています。現在、農水省委託研究や民間企業との共同研究で以下のプロジェクトを進めています。
1.深層学習を用いた大豆の生育情報センシング
農林水産省委託プロジェクト『大豆多収阻害要因の解明のための生産性診断技術の実証』【共同研究:農研機構 北海道農業研究センター】
日本の農業において、農業従事者の減少と高齢化は深刻な問題であり、世代交代とともに、これまで培われてきた知識やノウハウの喪失が懸念されています。農業において質保証と生産性の向上を同時に達成できなければ、収益の安定化が見込めず、若い世代にとって魅力のある産業にはなりません。そこで、農業にICT を導入して自動化・効率化を図った「スマート農業」が注目されています。
本研究では,スマート農業への最初のステップとして、屋外の大豆圃場で撮影した動画や静止画から生育情報を自動収集するシステムの開発を行っています。具体的には,アクションカメラをカメラスライダーに取り付けた簡易観測装置で株全体を撮影し(図参照)、この動画から花と子実の個数計測(図参照)を深層学習モデルと物体追跡手法を組み合わせることで実現します。
2.AIを活用した文書解析と金融分野への応用
【共同研究:三井住友DSアセットマネージメント】
投資信託運用会社では、日常的に投資候補企業の調査を行って投資先の選定を行っています。まず、アナリストが投資候補企業を調査して、その結果を速報的に往訪記録としてまとめ、それらを定期的または必要に応じてアナリストレポートとして発行します.ファンドマネージャーは、このアナリストレポートや有価証券報告書など様々な情報を考慮に入れて、総合的に投資判断を行います。このように、適切な投資判断を下すために多面的な情報収集と分析が要求され、熟練のファンドマネージャーと言えども簡単なことではありません。そこで,この業務をAIによってサポートするシステムの開発が求められています。
本研究室では、AIを活用した金融文書解析への応用として、大きく以下の2つの課題に取り組んでいます。
◎事例1「畳み込みニューラルネットワークを用いたアナリスト往訪記録における景況感判定」
アナリストレポートに比べ,より即時性の高いアナリスト往訪記録を用い,投資候補企業の業績評価を精度良く定量的に出力できるAIモデルの開発を行っています。本研究では、畳み込みニューラルネットワーク(図参照)で文書分類を行う研究をアナリスト往訪記録における景況判定に応用し、その判断根拠を可視化するシステム(図参照)を開発しています。
◎事例2「アナリストレポートにおけるキーワード関連文の抽出と景況感推移観測への応用判定」
本研究では、分析者の専門知識を前提としなくても自動的に手がかり表現の関係性が学習され、指定したキー単語に依存しない関連文抽出が可能となる深層学習モデルのアプローチを採用しています。ネットワーク構造を制約することで、全結合ニューラルネットワークで問題となる勾配消失等の問題を緩和し、文書の分類タスクで優れた成果をあげているBERTを採用した文書解析システムを開発しています。