AI×因果分析

井上研究室

井上研究室では、深層学習をはじめとしたAI技術を応用し、データ内に潜在する因果構造の抽出や因果推論を行うための手法の開発を行っています。


AI技術を用いた因果探索手法の開発と応用

近年、多様な分野でデータの計測・利活用が進められています。データの利活用を進めるためにはデータに対する理解が不可欠ですが、分野や対象によってはデータの生成過程やデータ内の変数間の関係性が未知の場合も多く存在しています。そのような対象について、観測されたデータ自体からデータ内の変数間の因果関係を抽出するための方法として、因果探索の研究が活発に行われており、井上研究室でも因果探索を行うための手法の開発とその応用に関する研究を行っています。

因果探索の概念図
因果探索の概念図
(1)深層学習を用いた因果探索手法の開発

データから因果関係を抽出するための方法として、井上研究室では深層学習を応用した手法の開発を行っています。画像分類や自然言語処理など様々な分野で注目されている深層学習ですが、深層学習を因果探索に応用することで非線形で複雑な因果関係を表現することが可能となります。

井上研究室では深層学習モデルの表現能力を活かし、複雑で高次元なデータに対して因果探索を行うための手法の開発を行っています。さらに、現実的なシチュエーションにおいても因果探索が行えるように、計測機器の不具合などで発生する欠損を含む不完全データ、株価のように時間の経過で変化していく時系列データなど、様々な特徴を持つデータに対する因果探索手法の開発に取り組んでいます。

深層学習を用いた因果探索
深層学習を用いた因果探索

(2)深層学習を用いた因果探索手法の応用

井上研究室では因果探索手法の開発とともに、因果探索手法の応用に関する研究も行っています。因果探索は観測データからそのデータ内の変数間の因果構造を抽出することが可能であるため、因果探索を行うことで対象の現象についての知識獲得に繋がると同時に、多様な応用が考えられます。

例えば製造現場において、各製造プロセスで計測している計測データや検査時に得られる検査データ間の因果関係の抽出が行えた場合、特定のプロセスで異常値が検出された際にその異常値がどのような経路で伝搬してきたものなのか、根本原因がどこにあるのかの早期発見に繋げることが可能となります。また、マーケティングの分野においても、年齢や性別など顧客の属性からどのような要望を持っている可能性があるのか、どのような要望を持っている人がどの商品を購入しやすいのかなどの因果関係が得られていれば、顧客の属性からどの商品を薦めるべきなのかを判断するなど、マーケティングに活かすことも可能です。

井上研究室ではこれらの例のように、応用を前提とした因果探索手法の改善にも取り組んでいます。

因果探索の応用例
因果探索の応用例