AI×ビッグデータ解析
小澤研究室
小澤研究室では、機械学習や深層学習に代表されるAI技術を様々なビッグデータ解析に応用し、大量かつ高次元のデータから有意な情報を効率よくオンラインで抽出し、そこから識別、予測、診断、異常検知、可視化する技術を開発しています。研究機関や企業などから提供された実課題に応用して、真に社会実装可能なシステム開発を行っています。現在、金融工学や医工学分野の課題と実データを大学病院や民間企業に提供して頂き,共同研究を実施しています.
1.AIを活用した文書解析と金融分野への応用
投資信託運用会社では、日常的に投資候補企業の調査を行って投資先の選定を行っています。まず、アナリストが投資候補企業を調査して、その結果を速報的に往訪記録としてまとめ、それらを定期的または必要に応じてアナリストレポートとして発行します.ファンドマネージャーは、このアナリストレポートや有価証券報告書など様々な情報を考慮に入れて、総合的に投資判断を行います。このように、適切な投資判断を下すために多面的な情報収集と分析が要求され、熟練のファンドマネージャーと言えども簡単なことではありません。そこで,この業務をAIによってサポートするシステムの開発が求められています。【共同研究:三井住友DSアセットマネージメント】
(1)大規模言語モデルによる不祥事関連記事の判定
本研究では,不祥事に関連した記事を大量の経済記事の中から特定するため(図6),第一段階として不祥事に関連する記事かどうかの判定を行える機械学習モデルの開発を行いました.そして,第二段階としてローカルLLM の金融分野での応用を目指し,その前段となるLLMへの不祥事知識の埋め込みを行いました.機械学習モデルには,事前学習済みモデルであるBERTを用いました.BERTには,文章埋め込み空間に異方性を生じる問題があり,対照学習手法であるSimCSEを用いて,文章埋め込み空間を等方的にすることで性能向上を図る方法を提案しています.
2.手術支援ロボットhinotoriのログデータ解析
手術支援ロボットはda Vinci Surgical Systemの独断場と言ってよく,後発のhinotoriによる外科手術はまだ始まったばかりです.hinotoriは,川崎重工業とシスメックスの共同出資により設立されたメディカロイドが開発し,生粋の神戸生まれのロボットです.このhinotoriを扱う医師の技量をログ分析や腹腔内画像分析など評価し,それを操作技術の高度化や技能教育につなげていくことが本研究の目的です.
(1)手術支援ロボットhinotoriの術中映像を用いた自動アノテーション手法
手術支援ロボットhinotoriを用いた外科手術の自動化に向けて,外科医のノウハウを手術映像やログを解析する手法の確立を目指しています.この第一歩として,本研究では,術中映像への自動アノテーションを目的として,腹腔内での手術用鉗子や臓器を高精度に検出する深層学習モデルYOLOv8を用いたシステムを開発しました(図7)